フードの袋に「1日あたり〇〇g」と書いてあるのに、うちの子には多すぎる気がする。そう感じたことはありませんか。その違和感は、たいてい正しいです。パッケージの目安表は、あくまで「平均的な体格と運動量の子」を想定した数字にすぎません。自分の子の体重から必要カロリーを計算し直すと、袋の目安とはっきり違う数字が出てくることがよくあります。
パッケージの目安量をそのまま信じていいのか
結論から言うと、パッケージの給与量表はあくまで出発点であり、そのまま採用していい数字ではありません。体重が同じ8kgの犬でも、避妊去勢の有無や運動量、年齢によって必要なカロリーはかなり変わります。
仕組みはこうです。フードメーカーは、同じ体重区分の犬猫をひとまとめにして目安量を決めています。そこには個体差が入り込む余地がありません。活発な成犬と、室内でほとんど運動しない成犬を同じ表で扱っているわけです。結果として、表の数字は「だいたいこのくらい」という粗い目安にしかなりません。
たとえば体重5kgの猫が2匹いるとします。1匹は去勢済みで日中はほぼ寝ている子、もう1匹は未去勢で活発に動き回る子。この2匹に同じグラム数のフードを与えると、前者は太りやすく、後者はやせやすくなります。体重が同じでも、必要なカロリーは個体ごとに違うという前提を忘れると、このズレに気づけません。
ただし、どんな場合でも計算し直すべきというわけではありません。子犬・子猫の成長期や、療法食を与えている場合は、一般的な計算式がそのまま当てはまらないことが多いです。こうしたケースでは、動物病院での指示を優先するのが安全です。あくまで「健康な成犬・成猫の維持期」を対象にした話だと考えてください。
計算前に用意しておきたいもの
計算自体は難しくありません。ただし、手元に揃えておくべきものが4つあります。これが曖昧だと、せっかく計算しても意味のない数字になってしまいます。
まず必要なのは、正確な体重です。動物病院で測った体重か、自宅のペット用体重計で測った数字を使います。人間用の体重計に抱っこして乗り、自分の体重を引く方法でも構いませんが、誤差が出やすいので小型犬・猫ではなるべく専用の体重計を使ったほうが安心です。
次に、フードパッケージに書かれているカロリー表示です。多くの場合「100gあたり〇〇kcal」という形で記載されています。ここで注意したいのは、表示が「100gあたり」なのか「1カップあたり」なのかという点です。単位を読み違えると、以降の計算がすべて狂います。
3つ目は電卓です。スマートフォンの電卓アプリで十分です。べき乗の計算が必要になる場面もあるため、関数電卓アプリがあるとなお安心です。
最後に、犬猫の現在の状態をメモしたものです。避妊去勢の有無、おおよその運動量、今の体型(やせ気味・標準・ぽっちゃり)を紙に書き出しておきます。これらは後の係数選びで使います。意外と見落とされがちですが、この準備を飛ばすと、せっかく出した数字の意味が分からなくなります。
実際に計算してみる手順
計算は大きく3段階です。安静時エネルギー要求量を出し、それに係数をかけて1日の必要カロリーを求め、最後にフードのグラム数に換算します。
最初に求めるのは安静時エネルギー要求量、通称RERです。一般的によく使われる簡易式は「体重kg×30+70」です。たとえば体重4kgの猫なら、4×30+70=190kcalがRERになります。体重が大きい犬の場合はもう少し精密な計算式(体重の0.75乗を使う式)が使われることもありますが、家庭での目安としては簡易式で十分です。
次に、このRERに生活状況に応じた係数をかけます。係数は、避妊去勢済みの成犬・成猫で1.6程度、未避妊・未去勢で1.8程度、肥満傾向があり減量が必要な場合はもっと低い係数が使われる、というように状況によって変わります。先ほどの体重4kgの猫が避妊済みなら、190×1.6=304kcalが1日の目安カロリー、つまりDERになります。
最後に、このDERをフードのカロリー表示で割ります。フードが100gあたり350kcalだとすると、304÷350×100=約87gが1日の給与量です。これを1日2回に分けるなら、1回あたり約43〜44gという計算になります。
ここで大事なのは、係数は「目安」であって「正解」ではないということです。同じ避妊済みの猫でも、よく動く子と動かない子では実際に必要なカロリーが変わります。計算で出た数字は、あくまでスタート地点だと考えてください。
どこでつまずきやすいか
この計算でつまずく人の多くは、ごく基本的なところでつまずきます。ひとつずつ見ていきます。
いちばん多いのは、フードの単位の読み違いです。「100gあたり」と「1カップ(約120ml)あたり」を混同すると、計算結果が大きくずれます。パッケージの裏面をよく見て、どちらの単位で表示されているかを確認してから計算に入ってください。
次に多いのが、係数の選び間違いです。避妊去勢の有無で係数が変わることを知らずに、未去勢の子に対して去勢済みの係数を使ってしまうケースがあります。この場合、計算上は適正でも、実際には少し多めの量を与えていることになります。
- おやつ分のカロリーを計算に入れ忘れる
- 複数の子にフードを与える家庭で、体重差を無視して均等に分けてしまう
この2つも定番のつまずきどころです。おやつを1日に多めに与えている家庭では、本来はその分のカロリーをDERから差し引いて、残りをフードで補う計算にする必要があります。おやつのカロリーを無視して100%フードで計算してしまうと、結果的に与えすぎになります。
また、持病がある犬猫や、療法食を与えている場合は、この一般的な計算式がそのまま当てはまらないことがあります。腎臓病や心臓病などの療法食は、カロリー以外の成分バランスも含めて獣医師が給与量を指示していることが多いため、自己判断で計算し直すのは避けたほうが無難です。迷ったら、計算結果を持って動物病院に相談するのがいちばん確実です。
計算した後、どう調整していくか
計算で出した数字は、あくまで出発点です。そこから先は、実際の体重の変化を見ながら微調整していく作業になります。計算だけで終わらせず、その後の観察とセットで考えることが大切です。
理由は単純で、係数も計算式も、あくまで「平均的な場合」を想定したものだからです。実際の代謝は個体差が大きく、同じ体重・同じ係数でも太る子とやせる子がいます。計算値はスタートラインであり、ゴールではありません。
たとえば、計算で出した量を2週間与えてみて、体重がじわじわ増えているなら、与えすぎのサインです。この場合、1日の給与量を5〜10%ほど減らして、また2週間様子を見ます。逆に体重が落ちてきているなら、同じ幅で増やしてみます。この「2週間ごとに様子を見て、5〜10%ずつ調整する」というやり方は、家庭でも無理なく続けられる方法です。ここは体重計に毎回正確に乗せるのが難しい猫などでは特に迷うところですが、月1回の定点観測でも十分に傾向はつかめます。
例外として、シニア期に入った犬猫は、代謝が落ちて必要カロリーが減っていくことがあります。若い頃の計算のまま同じ量を与え続けると、年齢とともに太りやすくなる場合があります。半年から1年に一度は体重と体型を見直して、計算をやり直す習慣をつけておくと安心です。数字は一度出して終わりではなく、生活の変化に合わせて読み直すものだと考えておくとよいでしょう。

